遺産分割の種類と協議の進め方・ポイント

○遺産分割協議の意義

 

907条(遺産分割)

1 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。

3 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

 

 

相続財産(遺産)は相続が開始すると、相続人が複数いる場合、原則、共有状態になります。(民法882条・896条898条899条参照  以下(   )内は参照条文)

しかし、通常、相続財産は、預貯金、株式他証券、不動産・動産等いろいろな種類があり、すべてを共有として扱うというのは、現実に即しません。この共有状態を解消するために行うのが遺産分割協議です。

一般的には、相続人の間で協議を行い、各種相続財産の帰属を具体的に決めていきます。(907条1(協議分割))「この不動産は一郎へ、あの高価な壺は二郎へ」というように、法定相続分等に従い、具体的に遺産の帰属先を決めていきます。この遺産に関する協議が整わない場合や協議ができない場合は、家庭裁判所に分割の請求をすることになります。(907条2(調停分割・審判分割))

 

※被相続人が遺言書で相続分を指定した場合や遺産分割方法を指定した場合は、原則、それに従います(902条(指定分相続分)・908条(指定分割))

 

 

以下、簡単に各種の遺産分割協議について説明します。

 

 

 

○協議分割

一般的に遺産分割協議といえばこれです。遺産分割協議をするのは相続人全員です⇒協議が成立する為には相続人全員の合意が必要です。

※誰が相続人となるかは「相続が開始したら」の項を御参考下さい

 

この遺産分割協議が整わない場合やできない場合(どうしても協議に参加しない相続人がいる場合等)は、家庭裁判所の調停分割・審判分割というながれになります。協議が成立したら遺産分割協議書を作成して、相続人全員が署名・押印をします。遺産分割協議書は必ず作成すべきです。後で何かあった場合や、「言った、言わない」の争いになった場合の重要な証拠となります。名前は自署し、市区町村に印鑑登録してあるご実印で押印して下さい。(遺産分割協議書の証拠能力を高める為です)

 

※遺産に不動産がある場合、必ず登記簿謄本のとおり遺産分割協議書に記載して下さい。土地の表示を被相続人の「住所」で記載する方がいますが、これだと厳密に土地を特定するということが出来ませんのでご注意ください。

 

 

○調停分割

通常は、相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申立てをします。

※申立先は、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。

 

調停では、調停委員、裁判官、相続人で協議がまとまるよう話合いがなされますが、調停での話合いがまとまらず、調停が成立しなかった場合には自動的に審判手続が開始されます。この場合は審判の申立はとくに不要です。調停が成立した場合には調停調書作成されます。遺産たる不動産の帰属先が明確に記載された調停調書であれば、この調停調書の謄本で相続を原因とした不動産の名義変更の登記ができます。

 

 

○審判分割

家庭裁判所における遺産分割調停が成立しなかった場合には自動的に審判手続が開始されます。この場合は審判の申立はとくに不要です。

※最初から審判の申立をしても、通常は家庭裁判所の職権で遺産分割調停から始まります。

審判の手続きは、調停と異なり、当事者が主張・立証をし、最終的には、裁判官が判断をします。

イメージ的には、いわゆる裁判⇒判決に近いものです。審判中に当事者の主張が合致し、協議がまとまれば、遺産分割調停が成立することもあり、この場合は前記と同じく調停調書が作成され終了ということになります。

遺産分割審判においては、その審判に不満があれば即時抗告という不服申立ての方法があり、不服がある当事者は即時抗告をすることができます。

即時抗告をして、却下等がなければ,高等裁判所の抗告審において審理されることになり、これにより原審判は確定しないことになります。

 

 

○まとめ(遺産分割をスムーズに行う方法・ポイント等)

 

他の項でも同様のことを述べていますが、被相続人の死亡からかなりの時間が経つと、遺産分割協議の当事者が多数になる、あるいは代襲相続等で疎遠の者同士が協議の当事者となる、という事態が生じ、遺産分割協議が成立しにくくなる可能性が高くなります。遺産分割を滞りなく進める為には、相続が開始したら、戸籍等を集め、相続人を確定させ、なるべく早めに協議をはじめることがポイントです。協議がすぐまとまればよいですが、相続人の間で意見の食い違いがある場合には、十分納得するまで話合いをすることが理想です。協議は話合いの場なので、当然自己の主張をすべきですが、同様に相手方の主張・意見についても聞く耳を持つということも大切です。ただ、どうしても協議がまとまらない場合は家庭裁判所に遺産分割調停を申立てたほうが、協議がまとまる場合もありますので、当事者の主張の隔たり等を勘案してご判断下さい。

しかし、家庭裁判所で遺産分割調停や審判をした場合でも、結論が出るまで数年かる場合もありますし、審判の場合、当事者が望まない形での審判が出る可能性もあり得ます。

 

前述しましたが、やはり、「相続開始後なるべく早めに協議をはじめる」「十分納得するまで話合いをする」「相手方の主張・意見についても聞く耳を持つ」

ということが、長い目でみれば、相続人全員の利益に資すると思います。



※平成30年相続法改正により、遺産分割についても改正がありました。改正の概要は「相続法の改正」の項をご確認下さい。


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