相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議(特別代理人選任申立て)

民法 第826条

1 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

 

親権者である父または母が、その子との間で互いに利益が相反する行為(利益相反行為)をする場合には、その子の為に特別代理人の選任を家庭裁判所に申立てる必要があります。また、同一の親権に服する子の間で利益が相反する行為などについても、同じ様に特別代理人の選任を家庭裁判所に申立てる必要があります。


例えば、子が3歳の場合、当然、法律的な判断能力などありません。それをよいことに、子の法定相続分を全く無視して、親が全ての遺産を取得して、自分の為に浪費したりすることは、許されることではありません。このようなことを防ぐ為に民法第826条の規定があります。 

 

 

○利益相反行為とは

 

親と子の間における利益相反行為とは、端的に言うと、親(親権者)にとって利益であり、未成年の子にとって不利益な行為のことです。

 

※利益相反に該当するか否かの基準については、「もっぱら行為自体ないし行為の外形だけから判断すべき」とする判例があります(最判昭和42.4.18)。よって、子の養育費を捻出する為に、親が金を借り、子が名義人となっている不動産に抵当権を設定する場合でも利益相反行為となります(下記例4)。

 

 

○利益相反行為の例

1.  例1)夫Aが死亡し、妻Bと未成年者の子Cで遺産分割協議をするような場合

         亡夫A==妻B

               C

           未成年の子

 

この例の場合、妻Bと未成年の子Cが遺産分割協議をするには、Cの為に、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てをして、選ばれた特別代理人とBが、遺産分割協議をする必要があります。

 

例2)夫Aが死亡し、妻Bと未成年者の子CとDで遺産分割協議をするような場合

          亡夫A==妻B

              C  D

            未成年の子

 

この例の場合、妻Bと未成年の子C及びDが遺産分割協議をするには、C、 Dそれぞれに特別代理人を選任して、妻B とC、 Dそれぞれの特別代理人の3人で遺産分割協議をする必要があります

 

例3) 相続人である母が未成年者についてのみ相続放棄の申述をする行為

 

 

例4) 親の債務の担保のため、未成年者の子の所有する(未成年者名義の)不動産に抵当権を設定するような場合

 

 

上記各例の場合、実情はどうであれ、外形的、客観的には親と子が利益相反する場合にあたるので、特別代理人の選任の申立ては必須のものとなります。

 

 

 

特別代理人の選任申立てにより、家庭裁判所のチェックが入ることになり、未成年の子が不利益を被ることを未然に防ぐことになります。

 

 

 

しかし、例えば、親が未成年の子に贈与(負担なし贈与)をする場合などは、子にとっては、利益にしかならないので特別代理人の選任は不要です。

 

 

※どのような行為が利益相反行為となるか否かは、上記の明白な事例など除いて、個別案件ごと慎重に考える必要がありますが、外形的、客観的に、親と子が利益相反するような場合には、特別代理人の選任申立てをしたほうがよいでしょう。

 

 

 

特別代理人とは

特別代理人は,家庭裁判所の審判で決められた行為(選任審判書に記載された行為)について、代理権を行使します。

家庭裁判所で定められた行為が終了した時に、特別代理人の任務は終了となります。特別代理人になるための資格等の制限は特段ないのですが、未成年者の利益を保護する為に選任されるので、当然、特別代理人としての職務を適切に行えることが必要です。よって未成年者との関係や利害関係の有無などが選任の際の基準になります。

一般的には、未成年の子の祖父、祖母、伯父、叔母がなることが多いようです。

 

 

 

特別代理人選任申立て手続き

 

申立て先⇒子の住所地の家庭裁判所

 

申立ての費用等

収入印紙800円分(子1人につき)

⇒連絡用の郵便切手(申立てする家庭裁判所へ確認してください)

 

申立てに必要な書面

(1) 申立書

(2) 標準的な申立の際の添付書面

・未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

・親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)

・特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票

・利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、抵当権設定契約書案・抵当権を設定する不動産の登記簿謄本等)

・利害関係人からの申立ての場合には、その者が利害関係を有することを証する資料(戸籍謄本等)

※ 同じ書類は1通で大丈夫です。

※ 申立前に入手が不可能な戸籍などがある場合は、申立後に追加提出することも出来ます。

※ 審理のために必要な場合は、家庭裁判所から追加書類の提出を求められることがあります。

※具体的な特別代理人選任申立書の書式・記載例については、家庭裁判所のホームページに詳細な記載例等がありますのでご確認下さい

 

 

申立書に印紙を貼り、切手と添付書面を同封して、家裁に提出又は郵送します。特に問題なければ、通常、1ヶ月位で、特別代理人選任申立は認められることになります。

 

 

特別代理人選任申立書・回答書作成のポイント

 

未成年の子に不利益な遺産分割協議案の場合、特別代理人選任申立は認められないのが原則的な取扱いです。よって、一般的には、未成年の子に法定相続分以上の遺産をやる内容の遺産分割協議案にします。しかし、子の取得分が、法定相続分に満たない場合でも、そのことについて、子の利益となる合理的理由や事情があれば、特別代理人選任申立は認められる可能性はあります。

 

子の遺産の取得分が法定相続分に満たない場合や、親が遺産を全て取得する内容の遺産分割協議書案の場合、ほぼ確実に、回答書という書面が家庭裁判所から送られて来ます。

回答書の質問に回答することになりますが、子の利益になる合理的な理由や事情があることを、をきちんと回答(説明)できないと、特別代理人選任申立は認められない可能性が高くなります。

 

 

○まとめ

 

子に不利益とならない遺産分割協議書案であれば、特に問題はないのですが、客観的、外形的に子に不利益に見える遺産分割協議書案の場合、「実際は子に不利益ではなく、子の利益になる」ということを、きちんと選任申立書や回答書で説明する必要があります。

 

このような事案の場合、特別代理人選任申立書や回答書の作成は、司法書士等の専門家に相談や依頼をしたほうがよいと思います。

 

当事務所は、特別代理人選任申立てに関する業務も行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

 

 

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