当ホームページの項目の中では、寄与分に関する項目をお読みになる方が多い傾向にあります。寄与分について関心が高いことの表れだと思います。
※このブログにおいては分かりやすくするため、民法第904条の2と民法第1050条を分けずに両方とも単に寄与分と記載している部分があります。ご了承ください。
近年の法改正により、寄与分を主張することができる人の範囲が広くなりました。相続人だけではなく、相続人以外の親族も寄与分を主張することができるようになりました。(民法904条の2・民法1050条 ※参照)
民法904条の2に基づき、相続人が寄与分を主張する場合は、遺産分割協議とともに行われることが多いですし、また相続人ではない親族が、1050条に基づき、特別の寄与分を主張するときは、その親族と相続人が特別寄与料の支払いに関する協議をすることになります。
遺産分割協議が整わなければ、家庭裁判所の審判・調停と言う流れになります。また特別寄与料の支払いに関する協議が整わなければ、家庭裁判所に協議に代わる処分の請求をすることになります。
※寄与分(民法904条の2)の詳細は寄与分の項をご確認下さい。
※新設 民法1050条の詳細は相続法改正詳細 特別の寄与(新設 民法1050条)の項をご確認下さい。
寄与分(民法904条の2)、特別の寄与(新設 民法1050条)のいずれについても、「時期、期間、方法、程度その他一切の事情を考慮」して決めますが、一般的に寄与分の主張は簡単には認められにくい傾向にあります。
以下が寄与分に関する判例の一部です。
「親が死亡するまで25年にわたり共に家業に従事し、最後までいっしょに生活をして世話をした長男について、寄与にあたるとした判例」
「病弱な夫を37年にわたり扶養看護し、夫名義の不動産も専ら自己の収入で購入した妻について、寄与にあたるとした判例」
「子が10年にもわたり、常に付添いの看護が必要な親を看護し、それにより、付添いの看護の費用の支払いを免れるなどしたことが、被相続人の財産の維持につき特別の寄与にあたるとした判例」
これらの判例からもわかるように、寄与分を主張するためには、長期間にわたり被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をしてきたということを、きちんとした証拠で残しておくことが重要になります。
例えば、自己の財産から、被相続人のために何か支払いをしたのであれば、その領収書等、自己の口座から被相続人のために出金をしたのであれば、その出金の記録が分かる通帳、また介護などをしている場合には、その介護の記録等を詳細につけたメモなどが証拠となりうるでしょう。
寄与分に関する主張も、証拠能力の高い証拠の存在の有無によって、主張の成否が分かれる可能性があります。
そこで、寄与分の主張をするか否かはっきりと決めていない段階でも、将来的に寄与分を主張する可能性がある場合には、早い段階から、前記のような証拠になりうるものの収集や作成、保管・保全等をきっちりとやっておくことがポイントになります。
※証拠能力⇒裁判で証拠となりうる資格のこと。
協議に代わる処分の請求については期間制限があります(民法1050条2項)。例えば相続人がダラダラと協議を伸ばしていると、期間制限にかかってしまうおそれがあるのでご注意ください。
(民法1050条2項)
前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
※個別の事案ごとに特殊な事情や状況がありますので、本ブログ記載の判例や事例等はあくまで参考として捉えてください。