先日、お客様からのお問い合わせ中に住宅用家屋証明書(以下、家屋証明書と記載)についての質問がありました。家屋証明書は一般の方にはなじみが薄い書面だと思います。
そこで今回のブログでは、知らないと意外と損する家屋証明書について説明したいと思います。
「住宅用家屋証明書」を知らない方はかなり多いのではないでしょうか。
一定の要件を満たした住宅用の家屋を個人が新築又は取得し、その個人の居住の用にその家屋を使う場合には、「住宅用家屋証明書」を所有権保存登記等に添付することで、登録免許税の税率の軽減措置を受けることができます。各自治体の建築課などで取得できます。
〇家屋証明書を使うと以下の通り登録免許税率が下がります。
(租税特別措置法第72条の2、第73条、第74条他)
※租税特別措置法の軽減税率は、令和7年6月26日現在の税率を記載しています。
所有権の保存登記:本則0.4%→特例0.15%
→特例0.1%(長期優良住宅・認定低炭素住宅)
所有権の移転登記:本則2.0%→特例0.3%
→特例0.1%(マンション長期優良住宅・認定低炭素住宅)
→特例0.2%(戸建住宅の長期優良住宅)
抵当権の設定登記:本則0.4%→特例0.1%
※家屋証明書の取得要件については最後に記載しています。
家屋証明書を使う場面で1番身近なのは、個人が新築で建物を建て、その個人の名義で所有権保存登記をする場合や新築マンションを購入して所有権保存登記をする場合などが多いのではないでしょうか。
このような場合は、一般的には建築業者、マンション販売業者が指定する司法書士が所有権保存登記をすることが多く、その司法書士が家屋証明書を取得するので、司法書士から家屋証明書に関する説明がない場合は、家屋証明書を取得していること自体に気づかない方もいるかもしれません。
前記の通り家屋証明書を取得し、登記申請書に添付することにより、所有権保存登記や所有権移転登記の登録免許税率が安くなります。場合によってはすごく登録免許税率・税額に差が出るので、その意味では重要な書面です。
一定の要件が整えば、中古マンションの売買にも家屋証明書を使うことができます。
例えば中古マンションの売買による所有権移転登記の場合に家屋証明書を添付できれば、登録免許税の税率は、1000分の20(2.0%)から1000分の3(0.3%)になります。仮に建物の評価額を1000万円だとすると、登録免許税が20万円から3万円に減るということです。17万円の減額です。これってすごいことですよね。
※マンションの敷地(敷地権)については売買の場合、租税特別措置法第72条第1項により登録免許税率は1000分の15になります。
当然、司法書士は軽減税率が適用される場合には家屋証明書を取得して登記するので、問題がないと言えますが、親族間で中古マンションの売買などをする場合に、当事者本人が登記をする場合などは絶対見逃してはいけない書面です。
また、建物を新築する、新築マンション・中古マンションを購入するなどのプランがあり、自分で予算を立てる場合などには、家屋証明書が使えるか否か、使える場合には登録免許税率がどれくらい低くなるかと言うのも勘案して予算を立ててみてください。前記の通り結構な差が出ますからね。
いずれにせよ、建物の新築を考えている方や新築マンションや中古マンションの購入を考えている方は、その家屋が家屋証明書を取得できる要件に当てはまるか否か注意しましょう。取得できる場合には家屋証明書を取得して低い税率で登記を受けましょう
〇家屋証明書の取得要件
1. 個人が新築又は取得し、本人が居住する住宅
2. 床面積が50平方メートル以上(一体として登記する車庫等を含む合計面積)
3. 居宅部分が90パーセントを超える住宅(事務所併用住宅・店舗併用住宅等)
4. 新築又は家屋の取得後1年以内
5. 移転登記の場合は、取得の原因が「売買」又は「競落」であること
6. 新築年月日が昭和57年1月1日以降の家屋である(家屋の登記全部事項証明書による)
ただし、新築年月日が昭和56年12月31日以前の家屋であっても、下記証明書のいずれかが添付されていれば対象となります。
o 「耐震基準適合証明書」(当該家屋の取得の日前2年以内に当該証明のための家屋の調査が終了したものに限る)
o 「住宅性能評価書の写し」(当該家屋の取得の日前2年以内に評価されたもので構造躯体の倒壊等防止に係る評価が等級1~3であるものに限る)
o 保険法人が発行する「既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る保険付保証明書」(当該住宅の取得の日前2年以内に契約が締結されたものに限る)なお、保険契約の内容については一定の要件があります。詳細は国土交通省ホームページにてご確認ください。
7. 区分所有建物は、建築基準法上の「耐火」または「準耐火」建築物であること
o 石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造のいずれかに該当するもの
o 上記の6構造以外の場合、確認申請書の副本の提示により、建築基準法上の「耐火」または「準耐火」建築物であることを確認します。
〇 上記、2の「床面積が50平方メートル以上」、4の「新築又は家屋の取得後1年内」、5の「移転登記の場合は、取得の原因が「売買」又は「競落」であること」などはネックとなる場合がありますので注意してください。
例えば、床面積が50平方メートルに満たない家屋、贈与を原因とする移転登記、取得後1年を超過した家屋については家屋証明書が取得できず、登録免許税率の軽減適用も受けられないということです。
〇認定低酸素住宅・長期優良住宅については、ネット等ですぐ検索できますので、興味のある方は調べてみてください。
〇租税特別措置法の軽減税率は、令和7年6月26日現在の税率を記載しています。